
Posted on 2024.01.01
急に事務所から連絡が入り、撮影に出られないかと相談を受ける。
今年こそは、と気合いを入れた新年一発目の撮影に向かうと、何故か龍の着ぐるみが用意されていた。
疑問に思いつつ身につけて入った撮影ブースにいたのは、見慣れた面々だ。
猫と犬と狐と狸。花苗、戌澄、瓜生、立貫の四名である。
四名とも、龍の着ぐるみを身に纏い、動きづらそうにのしのしと移動している。
『あけましておめでとうございま……ふっ』
『そっちも同じ格好してんだろ!?』
つい笑みを零してしまい、キャンキャンとこのブースでなければ怒られるような声量で白いポメラニアンに怒られる。背後から肉球が伸び、その場に犬を押し伏せた。
にょき、と器用に顔を見せたのは狐だ。いつものように犬と狐はやいやいとやっている。不仲、と言われる割には微笑ましい光景である。
とと、と狸が近づいてくる。
『あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします』
『これはこれはご丁寧に』
臆病仲間として頭を下げ合い、相手の着ぐるみを整えてやる。
猫はカメラに向けてポーズを決めているが、コミカルな龍の着ぐるみを着ているだけに様にならない。
途中で猫らしく、試行錯誤に飽きていた。
「はーい。皆揃ったので撮りまーす」
『前の年はウサ耳で今年はこれか!? 犬をなんだと……』
撮影スタッフの大高さんにもポメラニアンは食ってかかっている。まあまあまあ、と宥められている最中、撮影ブースの扉が開く。
入ってきたのは四名。見慣れた顔も、画面越しに見慣れた顔もあった。
「明けましておめでとうございます。お邪魔します」
宵知は丁寧に挨拶をすると、私に向けて手を振った。前脚を持ち上げ、ぴこぴこと耳を動かす。
隣にいるのは俳優の尾上白夜。今おかんむりの白いポメラニアンの恋人兼飼い主だ。少し引いた位置には小崎晴雨と名乗った狐の一族がいる、同じ狐である瓜生さんの魂を、圧を感じる程度に染めた人物である。
反対側には龍屋さんがいた。こちらもいつものメンバーだ。
宵知は、撮影に皆が集まる、と話をしたら可愛いもの好きらしく来たがり、年始の休みの最中だったので連れてきた。
尾上さんも小崎さんも同じような理由なのだろう。テレビでよく見る美形は白ポメに近づいてはブレた写真を撮っている。
「美月も撮っていいか?」
『いいよー』
カメラのレンズを向けられ、その場に転がったり、前脚を持ち上げてみたりとポーズを取る。
宵知の掌と遊んでいると、ぱしゃぱしゃと連写された。
一通りのアマチュア撮影会が終わると、ようやく大高の指示で本番の撮影が始まった。着ぐるみだしいっそコミカルに、と振り切って、四人でじったんばったんと暴れ回る。
ついでに撮ったムービーは事務所の告知用として、SNSに掲載されるそうだ。
「終了です。ありがとうございました!」
アニマルズは着ぐるみのまま解放され、各々の飼い主に服を脱がせてもらう。さっぱりとした感触に首を振り、床に四つ脚をついて身体を伸ばす。
『干支関連の撮影、ろくなことない……』
「まあまあ」
げっそりとした犬は文句を言いつつ、美形の膝の上に伸びている。つぶらな瞳と可愛らしい容姿も相俟って、あまりにも画面の中の光景だった。
狐は小崎さんに抱き上げられ、ゆったりと撫でられていた。魂の質がわかるだけに、近付きたくない相手だった。種族相性的にも物理的に食われる。
視界の癒やしを求めて狸に目を向ける。ぽてぽてと歩き、大高さんに抱き上げてもらい、ほう、と息を吐いていた。
猫はもっと撫でて撫でてと恋人に甘え、毛を整えてもらっている。事務所内のいつもの光景だ。
「壮観だな。犬も猫も狸も狐もなんて」
『そうだよね。宵知は誰がいちばん好き?』
答えなんて分かりきっているのにそう尋ねて、きゅるりと円らな瞳で恋人を見上げる。
ふわり、とこちらを見下ろす唇が綻んだ。
「兎だな」
迷いなく言い切った相手の掌に、顎を擦りつけておいた。