同人誌:宰相閣下と結婚することになった魔術師さん6

同人誌情報
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収録内容

BL、ファンタジー、過去作「宰相閣下と結婚することになった魔術師さん6 ~結婚式編~(web掲載)」のweb再録+書き下ろしです。

【web再録】

・宰相閣下と結婚することになった魔術師さん6 ~結婚式編~(約10.6万字)(R18)

・星の犬を送り出した直後の保護者さんたち(約0.1万字)

・宰相閣下と魔術師さんと星の雪降る朝(約0.1万字)

・宰相閣下と魔術師さんとやらしい下着(約1万字)(R18)

・魔術師さんと媚薬騒動[未遂] (約0.2万字)

・宰相閣下と魔術師さんと翠玉煌めく昼時に(約0.6万字)

・宰相閣下と魔術師さんたちと魔術博覧会警備(約3万字)

・宰相閣下と魔術師さんに留守を任された人たち(約0.3万字)

 web再録分は、web版から大きな変更はありません。同人誌収録時の修正箇所はwebに適用済です。

【書き下ろし】

・宰相閣下と春が来る迄に(約2万字)(R18)

A5サイズ二段組み190ページ分

通販について

紙版(とらのあな)※7/7までは予約扱いです→https://ec.toranoana.jp/joshi_r/ec/item/040031158609

電子書籍版(楽天Kobo電子書籍)→https://books.rakuten.co.jp/rk/8273459b26d537a2a0cdd8f8d2457f62/

電子書籍版(BOOK☆WALKER)→https://r18.bookwalker.jp/de49c93672-75f4-4263-ae54-17f667280aa7/

電子書籍版(メロンブックス)→https://www.melonbooks.co.jp/fromagee/detail/detail.php?product_id=2397298

電子書籍版(BOOTH)→https://sakamichi31.booth.pm/items/5713363
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頂いた分は普段の小説執筆のための事務用品やソフト代、参考書籍代などに有難く使わせていただきます。

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[R-18] #16 【新刊/電子書籍】宰相閣下と結婚することになった魔術師さん6 ~結婚式編~ | 宰相閣下と結婚す - pixiv
新刊です。 BL、ファンタジー、過去作「宰相閣下と結婚することになった魔術師さん6(web掲載)」のweb再録+書き下ろしです。 宰相×魔術師の固定CPです。 【web再録】 ・宰相閣下と結婚することになった魔術師さん6(約10.6万字)(...

 

書き下ろしサンプル

 明日が、互いに休みである夜だった。

 相手から一緒に風呂へと誘われて、少年のように心をときめかせながら躰を洗われた。ふくふくに育った白い泡が、雲のように湧き上がる。

 白い指が泡の下で皮膚を滑っていくのが、ひどく扇情的に映った。

「気持ち、い?」

 指先は太股に触れ、茂みのすれすれを掠める。

 さっきから悪戯っぽく近づいては離れていく。人を誑かす魔のような伴侶に白旗を揚げる。昔の奥手な印象は、今は時おり顔を覗かせる程度だ。

「ああ。だが、口寂しいな」

「我が儘ー」

 そう文句を言いつつ、肩越しに唇が近寄ってくる。振り向き様に接触して盗まれた。

 舌まで突っ込んで嘗め回され、くすくすと静かな笑い声が浴室に響く。赤く色づいた唇が、視界にこびりついた。

「口、寂しくなくなった?」

「もう少し」

 仕方ない、と近づいてきた赤い唇と、口付けを繰り返す。肌の上はたっぷりと泡立っていた筈なのに、ぷつぷつと弾け消える。

 伝い落ちる泡を掬って、相手の胸元になすりつける。指先で挟み込むと、慣れた様子で尖って存在を主張した。

 纏わり付いた泡が、体温を上げて色を変えた先端を濡れ光らせる。

「ロア」

「何だ」

「君を抱きたい」

「勃ちそうで良かったよ」

 ざばりと湯を浴びせられ、泡が落ちる。さば、ざば、と頭から湯を被っても、燃え上がった本能が治まる兆しはなかった。

 腹がもぞもぞして、熱は上がる一方だ。

「一回だけ、風呂でしておく?」

 近くの風呂の壁に私を押しつけると、彼は膝を立てて乗り上がった。

 唇がみじかく動くと、いつの間にやら彼の手のひらには瓶があった。中身を指先へと垂らす。だらだらに濡れた指が股の間に潜った。

 ぐちり、ぐちりと繋がる為の場所を拡げる音がする。自ら腕を伸ばしても良かったが、ただその時は目で愉しんだ。

「…………ん、う。ぁ、あ」

 見ているだけの私を睨め付け、後腔をいじる。とぷりと股から液が滴り、湯と混ざって流れていった。

 はあ、と吐いた息の音が籠もる。

 抜け出ていった指は、ぬるついたまま私の股へと伸びる。視線を合わせると、にたりと笑みを返された。

 伸びた髪は水に濡れ、肩から胸へと張り付いている。

「あぁ────」

 紅潮するその表情には、覚えがある。その表情を鍵に、ふっと意識を潜らせていった。

 河の流れがもう確定しきった、過去と呼ぶべきあの頃。私が、彼の後ろ姿ばかりを追っていた日のことだ。

 

 

 

 季節が冬に向かっていくにつれ、木の葉も色を落としていく。職場の自席、目の前に積み上がっていく仕事に、鬱々とした気分で息を吐いた。

 その時、横から湯気の立ったカップが机に置かれる。顔を上げると、部下の一人……テスカが微笑みかけた。

「少し、ご休憩なさってはいかがです?」

 彼女の高く落ち着いた声音に、ささくれ立った気分もなだらかになる。礼を言ってカップを受け取り、口元に運んだ。

 気候に冷えた舌には、優しい温度だ。

「そうしよう。調査がてら書庫に行ってくる。……これを飲み終わったら」

「ええ。仕事は逃げませんので、ごゆっくり」

 逆に仕事から逃げることも出来ないのだが。そう無粋な事を思って、カップの縁で口を塞いだ。

 気持ちゆっくりと紅茶を飲み終え、本と筆記具を抱えて席を立つ。

「次の会議までには戻る」

「はい。……あ! 宰相閣下、向かわれるなら、身分証をお持ちください」

 部下は自分の身分証を持ち上げてみせる。厚紙で出来たそれは王宮内で使用する、固有の番号と魔術式が刻み込まれている代物だ。

「書庫の機構が新しくなって、これから本や資料を借りる時には身分証を提示すると便利なんだそうです。少し前に情報が届いていたのですが、お伝えするのを忘れていました」

「ああ。去年の予算に上がっていた機構か。無事に稼働したんだな」

「ええ。本も勿論ですが、国の資料類にも全て番号が振っていただけて。そちらも探すのがとても早くなりましたわ」

「それは良かった。確保した予算が無駄にならずに済んだな」

 机から身分証を取り出し、懐に仕舞う。部下に目で合図をして、扉を開けて廊下へ出た。

 国王が存在する区画を警備している門番に挨拶をし、書庫までの少し長い道程を歩く。

 こつり、こつりと響く靴音が届くのは自分にだけだ。窓から漏れる風の温度が、骨身に沁みた。

「私も……歳を取ったということかな」

 長い付き合いのサウレは王子を後継として育てており、ルーカスはそもそも歳を取らない。

 そして私は、二人がそれぞれ進んでいく方向のどちらにも進めないまま、足踏みを繰り返している。

 とはいえ、大量に届く見合いの話を受けたとして、貴族間の力関係の為に子を諦めてくれ、とは相手に要求するには重い事項だ。

 男だろうが女だろうが、どちらを選んだところで同じこと。私は、仲良く過ごせるのか分からない相手に、二人きりの結婚生活を強いることになる。

「対外的に説明が楽なのは、男、なんだろうが……」

 出来れば貴族で、こちらの事情を汲んでなお頷いてくれるような相手が良い。更に希望を述べるとすれば、長い旅路の連れ添いとして、愛おしく思える存在が好い。

 いくつもの貴族家の名を挙げて、複数の力関係を辿る。何度かそうしている間に、書庫へと辿り着いていた。

「こんにちは、宰相閣下。返却ですかの?」

 書庫の番人であるテウ爺は、この王宮内でも最年長と言えるだろう。国内が荒れていた時期を経て尚、この年齢の人材が目立つ位置に残っているのは心強い。

「ええ。この本を……」

 持っていた本を差し出した時、奥から出てきた人物に気づいた。

 所どころ跳ねた暗褐色の髪を後ろに無理やり縛り、眼鏡の奥から濃い緑葉の瞳を覗かせる人物。

 魔術式構築課という曲者揃いの部署を纏める管理職であり、本人も魔術師であると聞く。課長代理という役職にいる、ロア・モーリッツという男だった。

「こんにちは。宰相閣下、本の返却ですよね?」

「ああ。どうして書庫に?」

 魔術式構築課は王宮内でなく、王宮の庭に専用の仕事場を持っている。

 別棟、と言えば聞こえはいいのだが、魔術での破壊行為が過ぎたため追い出された、というのが裏の事情だ。とはいえ、他国と比較しても優秀な魔術師の集団であることは間違いない。

「新しい魔術機構の導入支援の為にいるんですよ」

 彼はテウ爺の手から本を受け取ると、ぱらぱらと本の状態を確認し、机に新しく置かれた魔術装置に近寄った。

 想像していたよりも白い指先が、装置に取り付けられている釦を押す。横から視線を向けるテウ爺に対し、手順が辿れるようなゆっくりとした所作だった。

 装置が音を立て、置かれていた本は後方の棚へと戻される。

「手続きが終わりました。今日は本を借りる予定ですか?」

 印鑑と紙で管理していた以前とは、大違いの速度だった。声をかけられ、はっと顔を上げる。

「そのつもりだ。部下から身分証を使うよう言われたのだが……」

「はい。借りる本と一緒にお持ちください」

 普段は部下に対して指示をしている姿をよく見かける。会議に呼んだ時も、専門家として迷いなく適切な意見を述べる人物だ。

 だが、今日の対応は職員と使用者の立場だからか、どことなく柔らかい。ぱちり、と睫が動き、今の季節には恋しい草葉の色が私を見る。

 結婚に力関係が問題ない貴族家の出。男。事情を話して、理解を得られそうな相手。

「…………分かった。時間があれば、少し、機構の事についても話を聞きたいのだが」

 ふっと口から零れたのは、そんな提案だった。少し不自然か、とも思ったが、当人は朗らかに請け負う。

 目の下にはうっすらと隈が浮かんでいた。

 機構の導入のために、長いこと働いていたのだろうか。そんな相手に対し仕事を増やした罪悪感が、腹を不快に引っ掻いた。

「構いませんよ。魔術装置、見ますか?」

 そう提案した彼の瞳に、光が宿った。自分の手掛けたものを披露したい、と感じている者の煌めきだった。

 頷くと、機嫌の良さそうに手のひらが動き、普段は職員が待機している場所に招かれる。

「これが貸出と返却の手続きをする魔術装置です。本に一意に振られた番号と、書庫の使用者に一意に振られた番号を紐付けて、貸出、返却、の情報管理をします」

「部下が本が探しやすくなった、と言っていた。本の題名から直ぐに貸し出しているか分かるような仕組み、ということだろうか」

「その通りです。以前は貸し出し中の本については帳面で管理をしていましたが、本に関する情報から本に振られた番号を引っ張って、その番号を確認すると貸し出ししているか。もしくは書庫内にあれば、置かれている棚番号が分かります」

「ほう。確かに、いつも本を探す時には帳面を捲るか、テウ爺の記憶に頼っていたものな」

 ほほ、と視線を向けられたテウ爺は機嫌良く笑った。白髪を撫で、ふわりと空中に靡かせる。

「もう爺も長くは世に居らんからの。永く残る機構とやらに本の管理法を教えてやったのよ」

 魔術師はその黒い冗談に苦笑いすると、装置の画面を指先で軽く叩く。

 雑に縛った髪は痛々しげで、毛先も色が薄くなっている。柔らかく梳いて、髪油を足して、艶やかに戻してやりたくなった。

「司書が検索の手段として、どの情報を使っているか、という事を詳しく教えていただきました」

「そうか。確かに、君たち魔術師は魔術については専門だが、本の管理法については」

「はい、素人です。……けど、こうやって機構を作るたびに、ある程度は詳しくなりますね。いくら協力者がいても、理解して整理しないと魔術式として組み込めないので」

 指先が釦を押し、操作しては画面を切り替えていく。見慣れないそれらに視線を向けているふりをしながら、珍しい横顔を盗み見た。

 眼鏡の下に隠れている顔立ちは好ましい。顔色と、髪型と、いまは画面に対して猫背気味になっている姿勢が伸びれば、他から見ても様になるだろう。

「魔術式構築課の面々は、よく書庫で見掛ける。学びの姿勢は常々、見習いたいと思っていたところだよ」

「有難いお言葉ですが。部下も含め、魔術師は唯、知識に貪欲なだけです」

 仕事の場ではあるが、彼とここまでゆっくりと会話をする機会も珍しい。

 機構についての疑問点をなんとか絞り出し、返答の姿勢を視界に入れる。淀みなく答える様子は、専門家として理想的だ。

「────有難う、参考になった。他に提出されている魔術機構の予算も、見直してみよう」

「……てことは、却下予定の予算、ありましたか」

 鋭い指摘に黙ると、相手の眉根が寄った。

 興味を持つ魔術が話題になると、途端に感情豊かになる。猫の鼻先で綿毛でも振った気分だった。

「ちなみに、どれを通してほしい?」

「全部です」

「……君ね。確かに魔術師は貪欲なようだ。考えておこう」

「逃げ口上ではない、考えておく、を期待しています」

 慣れた表情筋の動きで口を引き結びかけて、堅物だと言われる己の印象を思い出す。無意味に口元を押さえ、考えているふりをした。

 目の前にいた魔術師は不思議そうな顔をすると、次の利用者の補助へと向かっていく。私は背後から礼を言い、本棚へと移動する。

 緑の瞳はちらりとこちらを見るが、興味を失ったかのように直ぐに逸れた。

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